いつかの遺失物係

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静かなサウナ

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1ヶ月くらい前(気をつければまだ外出くらいはいいのではないか、という頃だった(数年後にこれを読むことがあった時のためにも書いておく))、友達と軽井沢の温泉にいった。

その日3回目のサウナに入ると、それまで若干混んでいたサウナは、俺、そして若者と中年の三人だけだった。L字型が二段になっているベンチに座ると、1.5mくらい先に中年の横顔が見える。50代かそこらだと思う。汗で光った横顔を見ていると、どことなく自分の父親に似ているのに気づいて、少しだけ親近感を覚えた。人の良さそうな感じで、太ってはいないが腹だけが少し出ている。

しばらくすると、ピチャピチャ…ピチャピチャ…という音がしはじめた。ぎょっとして見ると、その中年が自分の腹の肉をつかみ、縦に揺らしている。サウナで汗をかきながら腹の肉を燃焼させて(そんな効果あるのか?)減らそうという魂胆だろう。端的にその様子は不快である。ピアノのクラシックがごく小さい音で流れているサウナ内に、汗で濡れた中年の腹が揺れるピチャピチャという音が特に音楽にリズムを合わせるでもなく響いていた。俺ともう一人の若者はただじっとその音を聞いている。音ひとつ立てず。彼の顔は見えないが、同じ不快感を共有していることは確かだった。

しばしの不快感のあと、その状況がだんだん面白く感じられるようになり、そのうち次第にやるせなくなり、そして最後に父の顔がちらついて切なくなったころ、その音はやんだ。再びピアノの小さい音しかしなくなったこのサウナでは、もうどんな音もたててはいけないような気がした。

 

 

なんとなく面白いことがあったから日記に書こうと思ったまま溜めていたことを書いてみたものの、わずか1ヶ月でもう取り戻しがたい日常の一幕みたいになってしまっていた…。

日常つながりで今の感じなど書いておくと、とりあえず自分の生活さえ守っていればいい、というモードが通用する相手ではないので(そもそもこれまでのそういうスタンスが招いてしまった現在なんだろう)、黙って上にまかせていたら今後もいろいろな人に大きな被害がでることは避けられないと思っている。仕事がなくなる人はもちろん、たとえばネットカフェを追われるなどして家がなくなる人もどんどん出てくるだろうし、政権と近くない業界ほど打撃を受けることにもなる(だからロビィ活動しとけということじゃなくてそういう政府はいかんのではって話)。

今はまだ生活ができている自分は、選挙以外にもたくさんあるはずの参政のしかたを模索したり応援していこうと思う。外山恒一が「国が止めるまで外に出て騒ごう」と言ってたけどマジでそれが一番なんじゃないの、という気持ちが拭えない。