ソーシキのケーシキ

数日前に、大学でお世話になったこともある教授のお通夜があった。入院していたことは知っていたが、そこまで悪いとは全く知らされておらず、突然の死に多くの人が驚いていて、自分も少なからずショックを受けた。

 

僕は結婚式に参加したことがない。僕が体験したことがあるのはフィクションの中の結婚式だけだ。だから僕が思い浮かべる結婚式は、ほとんどフィクションに出てくる結婚式のみであり、『卒業』や『ゴッドファーザー』などが僕の中の結婚式像の一端を担っている。それがいくら現実と乖離していようとも…。

法事もまたそうで、今まで参加したことある法事よりも圧倒的にフィクション内で見た法事の方が数が多く、それゆえ「法事とはこういうもの」という強いイメージを僕の中に残している。『お葬式』『サマーウォーズ』『犬神家の一族』『スパイダーマン』…いろんな法事がある。

しかし、フィクション内のイメージで法事に向かおうとすると多くの障害が出てくる。今回の通夜に際して自分がいかにそのディテールに無知かを知った。靴下の色や焼香の仕方、香典の包み方なんかは、映画を見ただけではもちろん身につくはずがない知識なのであった。

 

行ってみて感じたのは、「試されている…!」という感覚だった(もちろんその場の誰も参列者を試そうとなんかしていない)。

通夜に行ってこんな感想を持つのはあるべき状態じゃないのはわかってるが、実際にはそこのストレスが一番大きいもので、現在「同級生の多くが社会人として働いているが自分は違う」という状況に感じている負い目をより大きくするような超自意識膨張体験だった。

法事にもリクルートにも使って不自然ではありません、というような触れ込みを信じて買った大学の入学式用のスーツはうっすらとストライプの入ったもので、見回してみても周りの誰もストライプなんか入っていなく、それを一度気にし始めると、いてもたってもいられなかった。受付カードの「所属団体」の欄には書く情報がなく、他の人々が差し出す香典の封筒を確認して、またもや恥ずかしい気持ちに襲われる。ぎりぎりになって家から見つけ出した「何にでも使える」封筒に「御霊前」と書き込んだ香典には、他の人と違い、水引きがなかった。表にして出すのが急に恥ずかしくなり、つい裏面を上にして出すと、受付をしていた教授(知り合い)が「こういうのは表で出すんだよ」と善意で指摘してくれたのだが、恥ずかしさがマックスになって「あ、すみません」とヘラヘラしてしまった。相手はもちろん笑っていなかった。なぜなら通夜だから。ここでも落ち込む。

焼香の時は一番緊張した。かなりの人数が訪れる通夜であったため、とても長い列で焼香を待つ。ここでも恥をかきたくないという気持ちが強すぎて、ずっと前の人の焼香の仕方を真似しようと凝視していた。焼香が意味するものが何なのか、僕は知らない。自分は信仰を持っている自認はないが、親・祖父母がクリスチャンであることには大きな影響を受けている。それもあってか普段から寺社で手を合わせる習慣がないので、焼香して手を合わせ礼をするという弔い方はかなり馴染みの薄い行為なのだった。一挙手一投足をなぞるように済ませ、「今の俺にはこの動きに感情なんて込められないから!」という気持ちになりながらその部屋を出た。

 

法事には決まりごとが多い。僕の場合は、それに翻弄されて気持ちを消耗してしまった。だからといってそういうことはその場で言うのにふさわしくないのはわかっている。それに加え、あまのじゃくの気があるので周りのムードと自分の中でバランスをとるように、ドライであろうとしてしまった。これもあまり法事の場では表明しづらい態度だ。邪魔してはいけないと、悲しい顔をしている人からは離れてしばらく黙っていた。

そんなこんなで自分勝手に孤立した気分が、「社会人ではない自分」という心の隙間をめがけて侵入してきたので、故人の死を悼むのとはまた別の、変な落ち込み方をしてしまい、ちょっと困った。

 

そのあと、食事の用意されてあった場所で友達にこの気持ちを打ち明けてみると、(焼香について)「各々があの場で自由に弔えればいいのにね」という提案をしてくれた。「確かに!」と言いかけて、「やっぱりなし!」という気持ちになった。弔い自由形でも困る人が大勢出てしまい、結局は型を求めることになるだろうし。法事のややこしい様々な形式は、どんな人でもそれさえ守ればしっかり弔ったことになれる、という良さもあるということだ。

考えてみれば法事は合理化とは縁遠いジャンルの行事だ。細かい部分の合理化や便利化はされているが、そもそもが宗教的行事なので、行事それ自体が目的になっている。伊丹十三の『お葬式』では、そのしきたりに(まさに自分がそうだったように)翻弄される人々が描かれていて、それはそれで非常に人間的な感じがして良いものだった。だからといってすんなり受け入れられるようにはならないのだけれど。

 

結局のところ、こういうことにこだわったり、あまのじゃくだったり、自分は子供っぽいというのがわかる。

ロールプレイング小説体験 - 筒井康隆『旅のラゴス』(1986)

なぜ「ラゴスの旅」ではなく「旅のラゴス」なのか。読み始めてまずそこが気になった。

ラゴスとはこの小説の主人公の名前だ。ある世界で旅をする若者ラゴスが各地を訪れ、年を経ていく物語。最初の章を読むと、この世界がどうやら僕らのいる世界とは違うものであることがわかってくる。スカシウマやミドリウシといった動物が家畜として飼われ、人々にはある種の超常的な能力がある。この小説は異世界旅物語だ。その点ではナウシカゲド戦記はてしない物語指輪物語などとも似たジャンルかもしれない。特に、SF的な話の作られ方である点でナウシカによく似ている。

しかし、あえて言い切ってしまえば、この小説で面白いのはストーリーではない、と僕は思う。この小説はラゴスの一人称視点で進んでゆくが、この小説全体を通じてラゴスは不自然なくらいに冷めている。多少の感情の揺れはあるものの、どこかそれを傍観しているような冷静さがある。さらにラゴスは途中である過程を経てから、よりその傾向が強くなり、時代をも超える上空からの俯瞰視点になっていく。また、この小説は多くの旅物語とは違い、これといった大きな目標も、内面の成長や葛藤の克服といったものも、ほとんどないまま進んでゆく。

ではこの小説の推進力はどこにあるのか。それはこの世界自体の面白さだ。ラゴスが訪れる各地での人々の文化や暮らし、動植物の過ごすさま、そういった細部の描写が面白い。ラゴスが見た景色を通して、「ここに自分が暮らしたら」と想像し、この世界の人々や動植物の呼吸に耳をすませる、そういった面白さでもある。一種のロールプレイング的な楽しみ方だ。一つの章が終わるごとに変わっていく舞台を追いながら、次はどんな場所へ、という興味の持続がこの小説を支えている。そして、この世界の成り立ちについて思いを巡らせることのできるある展開も用意されている。

この小説のそういった楽しみ方を踏まえると、一人称視点ながらラゴスの内面の描写に多くを割かないという特徴も、その楽しみ方を支える構造の一つになっているのではないか。この世界の細部の描写、そしてそれを初めて見る者からの視点を強調することで、ラゴスの周囲に目を向けさせ、この世界でのロールプレイングをしやすくさせているのではないか。

とすると、タイトルの「旅のラゴス」というのも、読者がこの世界を見る媒介としてラゴスが置かれていることを示すものなのかもしれない。そんなことを考えたりした。

OOH OOH! SAY IT! STARS SHINE

今日は仮免許試験に合格したので、免許合宿のホテルの部屋で一人梅酒を炭酸で割って飲んだり、映画『ガタカ』を観たりと独身文化系アラサーOLの気分で楽しく過ごした。本当は今日に限らずこの四日くらいこんな調子でいる。

普段から一人でいるときには歌ったり踊ったりラップしたり顔をしかめたり急に笑ったりでたらめな英語をしゃべったり眉毛を上下させたり舌を出したりそういうことをひっきりなしにしてるけれど、ここに来てからはほとんどが一人の時間だから行動に歯止めがきかない。雪道を踊り歩きながらTSUTAYAに向かいつつ、そんな自分に幸せと寂寥を感じていた。OLの皆さんも僕と同じことを考えながらお過ごしであろうと思う。大館市の夜は寂しい。R.Y.U.S.E.I.の振り付けでお馴染みランニングマンを練習しながらホテルの入り口に帰り着いた僕を見ていた者は誰もいなかった。

部屋に帰ってネットを眺め、ブックマークに入れているいくつものサイトの中から幾つかのブログを訪れようという気になった。なんとなく。そうして開いたいくつ目かのブログ。細馬宏通さんのブログ「Fishing on the Beach」が消えていた。というか「Fishing on the beach 跡地」というページに変わっていた。なんと、2015年いっぱいで閉じていたらしかった。細馬さんの文章は平易でスマートで美しくておかしくてすごい。もっとちゃんと説明したいが僕の言葉はそれをするにはあまりに平易すぎる。ブログは読めなくなってしまったが細馬さんの文章は今後の著作などでまた追いかけていきたい。

好きなんだ、と思いつつ、ブログがなくなったことに数ヶ月気づいていなかった。そういうことっていうのはいくらでもある。気づいた時には、気づかなかった自分に対して少し虚しくなる。でもいい。僕は細馬さんのブログがなくなったことに気づかなかったけれど、これまで細馬さんの文章を時々読んできたことを忘れてしまったわけじゃない。こんな距離感だっていいだろ。

 

今日はただOLの心で眠りにつく。それだけ。

 

 

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【追記】

細馬宏通さんのブログはサイトのデータが壊れてしまったので消したそうです。新しいブログはこちらにできていました。僕の早とちりでした。ブログのほとんどは読めなくなっていまいましたが、またブログは更新してくれるということでひとまず安心です。

コインランドリー生活

コインランドリーを利用するのは初めてだ。三日分の洗濯物を放り込んで部屋に戻り、ブログを書いてみる。

 

一人で免許合宿に来ている。ここ秋田県大館市での二週間の滞在が予定されているが、まだ三日目だ。大館には雪が積もっていて、道路には雪はないものの、ところどころに雪かきでできた大きな雪山がゴロゴロと転がっている。さらに今日は夕方頃から現在までやわらかくて軽い雪がずっと静かに降っているので明日はきっと道路にも積もっているのではないか。

 

初日の時点でホテルの近くにTSUTAYAがあることが分かったので、夜に映画を5本500円で借りてきて、スパイク・ジョーンズの『Her/世界で一つの彼女』を観た。色彩設定が明確で、主人公の服装やオフィスや恋する相手となるOSなどが淡い赤系の色で彩られているので寒色の映像になった時の雰囲気の変化がわかりやすい。撮影監督はホイテ・ヴァン・ホイテマで、他に『ぼくのエリ 200歳の少女』『ザ・ファイター』『裏切りのサーカス』『インターステラー』『007 スペクター』などを話題作に多く携わっている。ホアキン・フェニックスはついこの間『ザ・マスター』で出演作を初めて観て度肝を抜かれたばかりだが、この役もまた変さ加減が良かった。スカヨハは元から好きなのでこの合宿中にあと何作か出演作を観ていきたいなと考えている。

 

車を運転できるようになるというのは僕にとっては大きなことだ。自転車の乗り方や泳ぎ方など、時間が空いても覚えていたり意識せずともできているような、技術に関する記憶を「手続き記憶」というらしいが、そういった手続き記憶を新たに書き加えるような体験はすごく久しぶりなことに思える。そしてなかなかに難しい。

自動車に乗っている時には、自分の身体は拡張されて自動車と同じ大きさになっている。リュックを背負っている時にリュックまで身体の一部として物を避けたりするような。しかしその自分が乗っている車の大きさの感覚がつかめない。自分の身体の大きさをわかっていないで歩くような状態だ。おととい読み終えた鷲田清一『ちぐはぐな身体〜ファッションって何?』によれば、人が、自分の身体の全体を知覚している状態などなく、身体は常にイメージによって自分のなかに形成されているものだという。それになぞらえて考えるなら僕は自動車に乗っている時の、自動車を含めた身体を自分のなかに形成できていないということになる。それが教習を経て形成されていくのだとしたら楽しみなことだ。

 

コインランドリーに洗濯物を見に行く。

乾燥機は使わずに洗濯物を持ち帰り、部屋の中に干す。

コインランドリーで生活したら楽しそうだという話を友達としたのを思い出した。広さが丁度いいしおしゃれだ。(そうは思いませんか?)

 

自動車学校では1〜数時間の空き時間が多く、本を読むことくらいしかすることがないので、持ってきた何冊かの本だけではすぐに読み終わってしまうかもしれない。それと音楽も聴いている。雪景色の中だと聴きたい音楽も変わってくるのか、あたたかみのある音楽か静かな音楽を選んでいるような気がする。スフィアン・スティーブンスが良い感じ。今日はモータウン系のソウルとかポップソングを主に聴いていて、ジャクソン5スティービー・ワンダーマーヴィン・ゲイとかだった。聴きながら空き時間に1時間くらい散歩したら元気になった。

ここでは聞きたいラジオが聞けないのが辛い。一方その代わりと言ってはなんだが、地元の高校生がたくさん自動車学校に来ていて訛りの入った会話が聴けるのは楽しい。今日も上京の不安と期待と東京の電車の難しさについて話していた高校生の男女の会話に聞き入ってしまっていた。「東京ではみんな地下鉄か」「私このアプリあるがら東京の電車はいげる気がしてきた」「バカ、そんなごど言ってるやつがダメになんだべ」

僕は話し相手が実技の時の教官しかいないため、教官に対しては口数多く話したりしている。今日学校のコース内を教官の隣で運転していたら、教習生が一人で運転する対向車を見た教官が「あの車の彼、気をつけて、目がイっちゃってる。」と静かに告げてきた。目がイっちゃってる、なんて表現を軽く使った教官が恐ろしく、そんな表現で表される彼(サンドイッチマン富澤似のイケメン)も恐ろしかった。

 

窓から外を見ると雪は降り止んでいた。ホテルの駐車場の雪の上にはタイヤ痕がいくつか走っているだけで、まだ誰の足跡もタイヤ痕もない、25mプールくらいの広さの真っ白なエリアが残っている。

ふとおしるこが食べたくなって、さっきコンビニで買ったインスタントのおしるこを開けようと思うので、今日はここでやめる。

 

私的音楽二十選 2015 【後半】

 前半はこちら。

necomachiradio.hatenablog.com

 

 

もう2015年も8割方終わってますよね。。下書きに入れつつ最後の数枚が決まらずに放っておいた記事を成仏させるべく書ききりました。せいぜい数十アクセスが見込めるかどうかの弱小記事ですがよろしければどうぞ。

前半では意図せず細野晴臣がやたらと出てくる文章になってしまっていましたが、後半はまたちょっと雰囲気が違うはずです。

 

 

11. cero - ワールドレコード (2010)

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これはなんだか新しい、とそう思いました。ceroのファーストアルバム。

ceroを好きになることは僕にとって新たな音楽の見方を手に入れることのきっかけでもありました。それは、ceroを通じてエキゾチカ、ヒップホップ、日本語ロック、ポップスなどをあらためて捉え直すことになったからです。ceroの素晴らしいところは、これはアジカンのゴッチも書いていました(これも)が、これまでの長い時代の中で築かれてきた豊潤な音楽の世界というものを意識した姿勢と、そこから引っ張ってくるセンスだと思います。このアルバムの中でも初期日本語ロック(僕の大好きなイラストレーター・漫画家の本秀康さんによるジャケットは、ムーンライダースの『火の玉ボーイ』へのオマージュです。さらに鈴木慶一プロデュースの曲も1曲あります。)からヒップホップからワールドミュージックからジャズから、色々なソースからユーモラスに引用してコラージュして独自の音楽を作り上げています。それは僕にとって、初めて来たのにどこか知っている気もする場所のような感触でした。

僕にとってこのアルバムやceroは、日本のロックの新たな時代の象徴として、これから音楽を聴くためのガイドとして、僕と同じ西東京(とは言ってもceroのメンバーは比較的新宿に近い側で育ってるはず)で育ってきた年上の兄ちゃんたちとして、好きであり続けるバンドであることは間違いないでしょう。

このアルバムならおすすめは「21世紀の日照りの都に雨が降る」「あののか」「exotic peenguin night」「大停電の夜に」「(I found it)Back Beard」「小旅行」などなど。彼らのラジオも色々な曲を知るきっかけになってくれておすすめですし、行く度に曲のアレンジが変わっているライブもおすすめです。先日もライブに行ってきたのですが、このアルバム収録の「outdoor」がまたカッコ良くなってまして最高でした。

 

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12.Sufjan Stevens - Illinois (2005)

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文句なしに美しい音楽。イリノイ州を題材にしたコンセプトアルバムではありますが、それを知らずとも浸ってしまう名曲の数々。そうしてそのあとで歌詞を読むとまた浮かび上がってくる新たなイメージ。そうか、なるほど、とそこでようやくコンセプトが見えてきます。このアルバムはあらゆる楽器の音色で編まれた壮大な物語なのです。

カラフルなサウンドはヴァン・ダイク・パークスなんかを思い起こさせ、時々出てくる反復するパートの音色はミニマル・ミュージックスティーブ・ライヒの影響も感じます。そんなスフィアン・スティーブンスが作り上げたこの箱庭的音楽群にどっぷり嵌ってしまう人はきっと多いんじゃないかと思います。マジ最高!

この曲は映画『リトル・ミス・サンシャイン』でも使われていましたね。

 

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13. Beck - Modern Guilt (2008)

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Beckの色んな顔の中でも一番クールな面が出ているのがおそらくこのアルバムです。デンジャーマウスをプロデューサーに置いてビート中心の作りにしていますが、和音や声や楽器の響きの浮遊感と気だるさは超サイケデリック。3分程度の曲が10曲のみという構成は60年代ごろのアルバムを意識しているとかよく書かれていますが、楽器や声の扱い方などもビートルズの『Revolver』などに通じるサイケ感を感じます。

「気だるさ」ってBeckの音楽のポイントの一つですが、僕は「気だるさ」を感じる音楽が好きなのかもしれないなとたった今思いました。くるり細野晴臣もスライも気だるさで好きになっているのかもな、と。

 

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14. Donny Hathaway - Live (1972)

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音楽を演奏することや、それを聴くことの素晴らしさが詰まっているアルバムです。見なくても聴けばわかる演奏者と観客の楽しげな距離感や、演奏者同士が楽しみながら曲をプレイしている様子、そういったものが本当によく伝わってきて、自分も観客のひとりになったような気持ちでこの演奏を楽しむことができるという点で、これ以上のライブ盤を僕はまだ聴いたことがありません。卓越した演奏家たちによる素晴らしい演奏とアイデアとが「ライブ」という場で作り上げた、魔法のような音楽です。

 

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15. Lamp - ゆめ (2014)

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このアルバムは、雨の日か晴れの日か曇りの日か夏の日か冬の日か春の日か秋の日に聴くとすばらしいです。つまり、とってもいいアルバムです。なかでもアルバム最後の曲「さち子」の美しさ、はかなさは言葉にできません。楽曲の洗練度の高さは日本のバンドでも最高レベルではないでしょうか。

また、メンバーの染谷大陽さんのブログでブラジル音楽などのさまざまな音楽に出会えたというのもあり、Lampはリスペクトしまくっています。このブログには本当にお世話になっております…。林静一のジャケットもほんといいですよね。

 

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16. (((さらうんど))) - See You, Blue (2015)

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 この辺りの音楽がどういうジャンルに分類されるのかは詳しくないので分からないのですが、普段そんなに聴かないタイプの音なのに、ダンスミュージックとしてのクオリティがとてつもなく高いので、初めて聴いた瞬間から僕の中でのクラシックの座に収まりました。この前のアルバムも良かったのですが、トラックが格段にレベルアップしたように感じます。ラッパーのイルリメとしても活動している鴨田潤(Vo.)の歌詞の世界観も相まって、とにかく心がときめくダンスミュージックです。それにしても鴨田潤はすごくいい歌詞を書く人ですね。冨田ラボ『エイプリルフール feat.坂本真綾』の歌詞もこの人の手によるものなんですが、歌詞とメロディーの調和と、その内容は感動ものです。(『エイプリルフール』といえばこのドキュメントの動画も面白かったので良かったら。)

(((さらうんど)))というグループ自体が面白い存在ですしこれからのアルバムも期待できます。僕の心の師匠である(大マジです)大原大次郎さんによるデザインもいいんですよねえ。後生大事にしていきたい1枚です。

 

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17. SIMI LAB - Page 2: Mind Over Matter (2014)

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SIMI LABのメンバーはほとんどがハーフで、それでも日本語だけしか話せないメンバーが大半です。そんなメンバーたちがそれぞれの境遇を持ち寄ってひとつの音楽を作ろうという時に、自分の生活がそのまま音楽と結びつくという点で、ヒップホップという音楽は最適じゃないかと思うのです。音楽を通じて逆境が武器に変わるその様がたまらなくかっこいいと感じられるのは、それが僕らの希望になりうるからじゃないでしょうか。特にこのアルバムでは自分たちのルーツに言及しつつ進んで行こうとするような曲が多くて非常にアガること間違いなしです。今年出た、リーダー的存在のOMSBのソロアルバム『Think Good』も傑作でした。OMSBが部屋にこもってMPCを叩きながら1曲を作るというドキュメンタリー映画『THE COCKPIT』(2015)も良かったですよ。これ観てから僕もMPC叩き始めました。

 

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18. Donnie Trumpet & The Social Experience - Surf (2015)

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最近のアルバムが続いていますね。このフリーダウンロードのアルバムは今年の6月ごろに出たばかりですが、ダウンロードしてから頻繁に聴いています。

シカゴのヒップホップクルー、Save Money Crewのメンバーらによって結成されたThe Social Experienceのアルバムなのですが、多数のゲストを招いてバラエティー豊かでハイクオリティなアルバムになってます。また僕としては、中心メンバーの一人であるラッパーのChance The Rapperが93年生まれの22歳だったりと、自分と歳の近いアーティストがやっている音楽ということで興味をもっている部分もあります。でもとにかく好きな理由の一番は、この曲が聴けることです。最初のピアノ、Chance The Rapperがラップをし始めるところ、Jamila Woodsが歌い出すところ、最後のゴスペル的展開まで最高の瞬間の連続です。なんといってもMVが最高。そしてこの曲、Chanceが自分の大切な祖母のことを歌っている曲なんですが、そこも最高。

曲やMVの手のかかりようなど、本当にフリーで良いのか、というクオリティです。

 

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このアルバムについて詳しくはこれを(えげつないくらい丁寧な記事です!!興味があるなら必読!)、Save Money Crewについてはこれを読めば良いでしょう。アルバムをダウンロードするならここから。

 

 

 

19. Tyler,The Creator - Cherry Bomb (2015)

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Frank OceanやThe Internet、Earl Sweatshirt(タイラーの弟)などメンバーが次々有名になっている、今年解散したLAの超人気ヒップホップクルーOFWGKTA(Odd Future Wolf Gang Kill Them Allという長過ぎる正式名称です)のリーダー、タイラー・ザ・クリエイターによるソロ4枚目のアルバム(ちなみに1枚目はここからダウンロード可)。

タイラーのアルバムは2枚目の『GOBLIN』(2011)だけ聴いてないのですが、それを抜いてもこれまでのアルバムと較べて一番メロウで甘酸っぱい音になっていて、非常に好みでした。リバーブのかかったキーボードやギターの音がすごく心地いい曲が多めで、一方で破壊的な曲もあるのですが、それでも全体にこれまでよりも少し大人な内容というか、気持ちよく聴けるアルバムになっていると思います。歌詞も少し可愛い恋の曲(といっても逮捕を恐れて未成年の彼女のことが好きなのにヤれないという内容)があったりと、尖った部分以外が見えるのも良いですね。

参加アーティストにはKanye WestやLil WayneにPharrell Williamsなど豪華。The InternetのSyd The Kidも何曲かでコーラスで参加しています。

この曲はタイラーのへたくそな歌とメロウなトラック・コーラスがすごく良いですよ。MVもタイラーが可愛いのでおすすめ(MVの後半は「Deathcamp」という別の曲のMVになっていてそっちはマッドマックス風)。

 

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20. D'Angelo - Voodoo (2000)

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去年の終わりにかなり久しぶりに3rdアルバムを出したディアンジェロの2ndアルバム。

ディアンジェロを聴いたのは、星野源が何度もディアンジェロ好きを公言していて気になって聴いてみたのが最初なんですが、初めてこのジャケを見たときは「うわっ、コワっ、キツっ」てな感じで、なんとなく想像していた感じと全然違う、かなりマッチョなジャケットに結構引きました。この写真とブラックレターで書かれた「Voodoo」の文字がとにかく強い方向でマッチしてます(良くも悪くもダサいと思う)。

いざ聴いてみましょう。…ん…?なんかくぐもったような音…派手なメロディーや演奏でもないし…歌もざわざわごにょごにょしてて微妙…。初めて聴いた人、とくにソウルやファンクに馴染みがない人だとそんな感想を抱く人も少なくないと思います。僕も最初からハマったわけではありませんでした。

僕なりにこのアルバムの良さを理解しようとする人におすすめしたいのが、この曲を大きな音(重要!)で聴いて踊ったり、コーラスに自己流で参加してみることです。このアルバムに流れてる魔力に気づけるかもしれません。

いったいどんな魔法なのかを理解することも口で説明することも僕にはできるとは思えませんが、手数の少ないながらミチミチした音づくりの演奏の密室感と、分厚く重なったコーラスの禍々しさやゴスペルに通じるような神聖さは、ものすごくプリミティブな感覚に訴えかけてくるような、太古から現代まで見えない何かが通じてくるような、そんな揺さぶられ方です。この点で、前半で紹介したJames Blakeとディアンジェロの音楽は通じる何かがあると感じます。実際、James Blakeはディアンジェロの音楽が大好きだと公言しています。この演奏の感じは、ceroの3rdアルバム『Obscure Ride』や藤井洋平の音楽が好きな人は入っていきやすいんじゃないでしょうか。

アルバム全体を流れるドロっとした空気は保ちつつも、ファンキーな曲からヒップホップな曲、クラクラするほどメロウな曲もあり。繰り返しの中で気持ち良さが生まれてくるタイプの音楽だということもあって、聴くほど味出まくりの名盤だと思います。

そんなアルバムの中でも僕はロバータ・フラックのカバーをしたこの曲が好きですね。

 

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ちなみにディアンジェロの3rdアルバムの話ではありましたが、こないだの「菊地成孔の粋な夜電波」ではディアンジェロを中心としたブラックミュージック特集が行なわれていて、ディアンジェロの音楽がいかにすごいかというのを音楽家の観点から分析していてかなり面白い回になっていたのでおすすめです。(ニコ動のリンクです)

前編 #232 2015.11.06 ‐ ニコニコ動画:GINZA

後編 #233 2015.11.13 ‐ ニコニコ動画:GINZA

 

 

 

こんな感じで2015年が終わろうとしている中、自分の現時点のベストアルバムを選出してみたわけですが、書いている数ヶ月の間にもどんどん入れ替わってしまい、さらに文体もその日ごとのテンションで変わってしまい、どうにもこうにもならないままようやく(誰にも望まれることなく)書き上げることができました。2016年もできたらまたやろうかなと思います。この記事が100PVくらい行ってくれるといいのですが…。ちなみに最近はVulfpeckというバンドにドハマりしそうな予感です。ではさようなら。

 

最後に僕が普段からお世話になっている音楽ブログをあげておきます。

 

blog.livedoor.jp

トレンドの音楽から各種ネット上の音源までをあり得ないくらいの情報収集能力でレビューや紹介しまくっているブログ。知られざるフリーダウンロード音源に沢山出会えます。

非常に残念ながら先日更新を停止してしまったのですが、ブログ主の国分純平さんは本名で「ミュージック・マガジン」にフリーダウンロードの音源紹介の連載を開始されたそうです。ブログは残しておいてくれるそうなので掘り放題ですよ。

 

lampnoakari.jugem.cc

この記事内でも書いたAOR・シティポップスバンド、Lamp の染谷大陽さんが書いているブログ。染谷さんが選んだ聴いておくべきアルバム100枚や、ソウル、ブラジル音楽のおすすめなど、染谷さんが好きな音楽について細かく技術的な部分に触れて書いているので、ミュージシャンが書いている文章としての面白さがかなりあります。僕はここで知ったブラジル音楽をけっこう買ったりしています。

 

kaykbay.hatenablog.com

日本語ラップのサンプリングネタを探し続けるブログ。最近知ったブログですがかなり楽しいです。自分の好きな曲から元ネタの良い曲の方にたどり着けるのでそこが良いところ。大変な作業だと思うのですが頑張って続けてくれたら嬉しいですね。

 

 

こんなところです。

相対的に

外山恒一が少し前にネットに発表したテキストがめっぽう面白かったので衝撃を受けた。これは読んでない人にも一応薦めておくべきかもしれない、と思いこのブログに書こうと思い立ったのだった。(思い立ってから数週間この記事を下書きに放り込んでいた)以下はこのテキストの紹介と僕の取るに足らない感想であるので、この下に貼ったリンクに飛んでテキストを読みさえすればこのブログを読む必要はない。

 

野間易通 徹底批判

 

 

まず外山恒一、そして野間易通についての最低限の情報を書いておくと、外山恒一(とやまこういち)はファシストを自称する政治活動家である。2007年の都知事選の政見放送によってネット上では有名だが、ネタとしての知られ方の方が多いように感じる(僕もこのテキストを読むまでは政見放送のイメージだけで、ただ奇抜なことをするオカシな人だと思っていた)。最近の都知事選では当選してほしくない候補の選挙カーの後ろから街宣車で追っかけ、「原発推進頑張ってください、日本を滅ぼしましょう!」などと誉め殺しする活動などしているようだ。いずれにせよ異端な活動家である。

一方、野間易通(のまやすみち)はリベラルな活動家だ。よく知られているのは「レイシストをしばき隊」や反原発デモの代表としての活動だと思う。「しばき隊」は「在特会在日特権を許さない市民の会)」によるヘイトスピーチに対抗するために作られた団体である。こちらはこちらで過激な運動を展開している運動家である。

 

さて、このテキストはその名が表す通り、外山恒一が、野間易通を批判する、という趣旨の文章だ。けれどその構造と内容が面白いために両者をよく知らない僕のような者でも大変面白い読み物として読めてしまった。

このテキストは1章と2章に分かれていて、それぞれ違う観点から野間易通を批判するものとなっているのだが、この文章の面白いところは野間易通批判の文章が、1章では日本の社会運動史について、2章では欧米のカウンターカルチャーが日本でサブカルチャーとなりそしてサブカルへと変化した経緯についての、分かりやすい解説としても読めるところだ。

黄金期のサブカルチャーを後追いするしかなく、骨の抜けた「サブカル」に親しんできた平成生まれとしてはこの記事で初めて、あの当時のサブカルチャーになにか感じるものの正体が知れたような気持ちになった。また、1章もだいぶ興味深い話が読める。なかでも違う思想の人々がどのようにすれば同じ行動をとれるか、というくだりはとても興味深かった。当たり前の話なのかもしれないが。

この人の文章を読むにつけ、この人が自分の思想や活動を相対化してとらえていることがよくわかる。自分の思想を絶対とするわけではなく、社会の中で自分がどの位置にいるか、またはどういう見方をしているか、されているかを客観視することができている。だからこそ、極端なスタンスをとっている側の人の文章なのにすごく読みやすく面白いのだと思う。周りに流されるという意味での相対ではなく、周りとの位置関係を感じるという意味での相対ができているかどうかは重要だと思った。

でもとにかくまあ、読めばきっと面白いと思います。

 

私的音楽二十選 2015 【前半】

現在自分が何を好んでいるのかを書き記すことが何かにつながるかもしれないと思っているので、2015年現在の自分の中でのベストアルバムを20枚選んでみました。これはミュージシャンのbeipanaさんがやっていたのを真似しているわけですが。

自分が音楽を自覚的に好きになったのは多分中学3年の頃だったと思います。それまでなんとなく聴いていたJ-POPを聴かなくなって、THE BLUE HEARTSにハマった。「音楽を聴こう」と急に思い立ち、「ロック」ときいて思い浮かぶ名前をあてにしてThe BeatlesThe Rolling StonesEric Claptonなどのいわゆるクラシックロックから自発的に聴くようになりました。当時はストーンズのいったい何がかっこいいのかわからなかったけれど、かっこいいはずだと思い込んで聴いていました。今となってみればこのやせ我慢があって本当に良かった。この我慢ができなくなってしまったら、新しい分野に進むこともできなくなってしまうんじゃないかと思っています。少しのやせ我慢を伴いながら新しいジャンルに飛び込むのは、良さが分かって来た時が嬉しくて楽しくて、最近そうしてヒップホップとブラジル・ラテン音楽にハマりかけています。今まで知らなかったものだらけのジャンルは、目の前にまだ開けられていない宝箱がうず高く積まれているようで本当に楽しいです。

幸い父親が音楽好きで、高校時代にはLed Zeppelinのコピーバンドをやっていたり、細野晴臣を師と仰いでいたりしたような人だったので家に色々なCDがあり、今でもそこからたまに新しいものを探してきて聴いたりしています(父はラテン音楽は好きなようですがヒップホップは一切聴きません)。

ともかくまあそうして音楽を聴き始めたことは結果的に美術や映画の扉も開けてくれる事にもなったのだと思います。僕の場合には。

 

順不同で20枚あげるうちの、まずは最初の10枚。来年になっても変わっていなさそうな10枚を。

 

1.Sly & The Family Stone - There's A Riot Goin' On (1971)

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僕にとってブラックミュージックの魅力を知るきっかけでもあり、ファンクとの出会いでもあった1枚。中学3年のいつかの下校時に、iPodに入れたこのアルバムの1曲目を初めて聴いた瞬間、校門前で心が小躍りしたのを今でも憶えています。静かな熱が聴いている方をも熱くさせるこの感じ。今でもまだこのアルバムにはマジックを感じますし、そしてまたこの熟成された空気感の中にスライ・ストーンという人の青春のようなものも感じられます。だから、日本で再結成ライブをした時に細野晴臣がFamily Affairを聴いて泣いた、という話を読んだ時にその気持ちが分かる気がしました。細野さんにとってスライは最重要バンドのひとつでしょうし、青春でもあったんだろうなと思います。
少し暗いですが初めての人にも聴きやすいファンクのはずです。やるせない気持ちの時なんか、どうでしょうか。

 

 

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2.James Brown - Love Power Peace Live At The Olympia Paris 1971 (1992)

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ファンクの始祖といえばこの人ですが、僕がJBで最初に聴いたアルバムはまだJBがファンクを始める前のものでした。それはその時あまりよくわからなかったんですが、このライブ盤を聴いてがつんとやられました。こんな演奏されたらもう踊るしか無い、というくらいの熱量と技術。このパリライブは映像も残っているんですが、それはもう恐ろしいです。JBのキレキレのダンス。この頃のバンドメンバーには、後にP-Funkでも活躍するブーツィー・コリンズ(ベース)と兄のキャットフィッシュ・コリンズ(ギター)、フレッド・ウェズリー(トロンボーン)らがいて、ノリにノっているという佇まい。映像としても面白いです。ちなみにこのライブが行なわれた1971年と同年に上記のスライの『暴動(There's A Riot Goin' Onの邦題)』が発表されていますね。

そういえばこのライブ盤を高校の時に同じバンドでベースをやっていた友達に貸したら「よくわからなかった」といって返ってきた切ない思い出があります。

下の映像は音がかなり悪いですがCDではカットされている諸々(ブーツィーのベースソロなど)が聴けたりします。最初の2曲がおすすめです。

 

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3.The Band - The Band (1961)

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ジャケットが最高です。この人たちはどうやら南北戦争の頃の服装をしているそうで、シブすぎです。父親のCD棚の中からこのジャケットを見つけて、かっこいい…と思って聴いてみたらおじさんくさい音楽が流れてきました。聴いているうちに身体に馴染んでくるような音楽でした。

僕はリヴォン・ヘルム(ボーカル、ドラム、マンドリン)が顔をしかめて歌う姿がたまらなく好きで、ロックミュージシャンの中で一番かっこいいのは彼だと思っています。彼のドラムは素朴で心に響くからとても好きです。粘りのある声も。

吉祥寺の名画座バウスシアターが閉まる最後の日に、このザ・バンドの解散ライブの映画『Last Waltz』(マーティン・スコセッシ監督)を爆音上映で観たことが忘れられません。その映画の中から僕の1番好きな曲を。The Bandの代表曲であり、南北戦争のことを歌った曲でもあります。

 

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4.The Shins - Wincing The Night Away (2007)

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素晴らしきインディーミュージック。あちこち行き来するグッドメロディーとシャウト気味の高い声がどこかなつかしい場所へ連れて行ってくれます。アレンジはとにかくポップ、それでいて洒落っ気があって、60年代の音楽の影響も感じます。こういう音楽を作る音楽家の人をもっと見つけたいなと思います。「Phantom Limb」は良い曲ぞろいのこのアルバムの中でも1番の名曲です。

 

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5.James Blake - James Blake (2011)

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自分の心の内から聴こえてくるような音楽というものがあります。僕にとってはそれがこれでした。アナログな声の重なりが原初的で神秘的なイメージを呼び起こしてくれます。音楽というものが生まれてから今までにはるかな年月が経っているはずですが、このアルバムを聴いていると音楽が昔から持っているはずのプリミティブな力を強く感じ、この若い音楽家は時代を超えた音楽の芯をとらえているんじゃないかと思えてきます。

 

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6.Beck - Sea Change (2002)

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Beckの音楽は常に変わり続けていますが、いつも時代と付かず離れずなところにいるような感じがします。『Sea Change』はローファイなアルバムで世に出てきたBeckが思い切りハイファイな音を目指した作品ですが、ギミカルな曲を作るイメージだったBeckが直球の歌モノで勝負したらこんないいアルバムを作ってしまった、というのはリアルタイムで追っていたらきっと相当驚いたと思います。

音を大きめにして歌とギターとオーケストレーションの音の世界に浸かるように聴くと気持ちが良いアルバムです。

  

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7.細野晴臣 - 泰安洋行 (1976)

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エキゾチカは"ここではないどこかを夢見る"ことだと誰かが言っていたような気がします。このアルバムを聴いたときに思い浮かぶのは、ネオンが妖しく光る香港の裏路地や、カリブからハワイを通って沖縄へと吹く太平洋の風や、東南アジアの湿度たっぷりの市場(全部行った事ない)、あるいはそれらが混ざり合った風景。時代の流れを離れた音楽が鳴っているあいだは、僕らもどこかへ思いを馳せることができるのです。たぶん。

演奏の話をすれば、ドラム(林立夫)とピアノ(佐藤博)が素晴らしいです。佐藤博はピアノを20歳から死ぬほど練習してここまで弾けるようになったらしいですね、Wikipediaに書いてありました(情報が正しいかは分かりません)。僕も今からピアノちゃんと練習したらもう少し上手くなれるんでしょうか。今はとても下手なので。そういえば細野晴臣がこないだラジオで、そろそろライブでピアノ弾こうかな、と話していました。

 

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8.くるり - TEAM ROCK (2001)

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くるりで何か1枚選ぼうと思ったらこれになりました。Beckといい細野晴臣といい、色々な音楽性でアウトプットする人たちが好きな部分があります。くるりはメロディーとコードが好きなんだと思うのですが、考えてみるとどうして好きなのかは言葉にはなかなかできません。この中では「愛なき世界」「カレーの歌」「ばらの花」「迷路ゲーム」「リバー」あたりが特に好きです。「ばらの花」って形容しがたい良さがあります。そのせいか最初はそんなに好きじゃありませんでしたが、今では大好きな曲の一つです。

 

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9.星野源 - ばかのうた (2010)

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星野源にとっての『HOSONO HOUSE』。

星野源は意図的に歌の題材を日常や生活の中の歌になりにくそうなところから見つけ出してきます。それがあざとく感じる時もあり、逆にどうしようもなくぐっとくることもあり、結果的に大変好きなアルバムであることは確かです。

2nd、3rdにいくにつれて音楽性が広がっていって、今はもうこういうシンプルなアルバムはきっと出さないだろうなという内容ですが、そのシンプルな編成の楽曲がなかなか素敵です。このアルバムで高田漣とそのペダルスティールが好きになりました。

何曲かコピーしましたが少し難しいんですよねコードが。それゆえに星野源らしいコードって聴くとけっこうわかりやすかったりします。

アルバム中で唯一本人以外が作曲している「ただいま」(細野晴臣作曲)や、他にも「ばらばら」「夜中唄」「くせのうた」「兄妹」「穴を掘る」など良い曲が多いです。

 

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10.スチャダラパー - 5th Wheel 2 The Coach (1995)

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僕が初めて聴いたヒップホップのアルバムがこれ。高校生の一時期ずっと聴いてました。日本語ラップの面白さはここにたくさんつまっていると思います。ラップの面白さとトラックのかっこよさ。90年代のセンスが濃縮されている感じで、しかもこのアルバムが出た約1ヶ月前に生まれた者としては古い言葉が満載だったりして、そこも逆に楽しいところです。ヒップホップの入り口としてこれを選んだ自分、よくやった。

このアルバムの名曲といったらサマーソングのクラシックといっても差し支えない「サマージャム'95」って感じですが、「From 喜怒哀楽」も相当良い曲です。

 

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後半へつづく。